この廊下を、明治の紳士も、チャップリンも、そして今夜のあなたも歩く。
明治11年——1878年、日本初の本格的なリゾートホテルとして箱根・宮ノ下に生まれた富士屋ホテル。創業者・山口仙之助が築いた一棟の洋館は増改築を重ねて壮大な建築群となり、その多くが登録有形文化財に登録されています。2年以上に及ぶ大改修を経て、2020年には「新生」富士屋ホテルとして再び扉を開きました。
古い建物に泊まるのではありません。148年続く物語の続きに、自分の一泊を書き足しに行くのです。クラシック映画に入り込んだようなロビーから始まる滞在を、一次情報をもとに紐解いていきます。
一四〇年の物語の続きに、自分の一泊を書き足す

箱根の宿は数あれど、「日本のリゾートホテルの原点」はここにしかありません。富士屋ホテルを選ぶことは、快適な一泊を買うことではなく、日本のホテル史そのものに滞在することです。
本館ロビーに足を踏み入れた瞬間、時間の流れが変わります。差し込む陽光、磨き込まれた意匠、ゆったりと流れる時。掲げられた社是は「至誠」——この上なく誠実な真心で迎えるという一語で、それは創業から今日まで、この館の空気そのものになっています。
歴史の重さに構える必要はありません。ノスタルジックな趣はそのままに、大改修で快適性は現代の水準に磨き直されています。クラシックの入口として、これほどふさわしい一軒はないと思います。
宮ノ下の富士屋ホテルと、湯本富士屋ホテル。先に名前の整理を
予約の前に、ひとつだけ整理しておきたいことがあります。箱根には「富士屋ホテル」と名の付く宿がふたつあります。本記事でご紹介しているのは、宮ノ下に建つ1878年創業のクラシックホテル。もうひとつの湯本富士屋ホテルは、同じ富士屋ホテルズ&リゾーツのグループに属する、箱根湯本エリアの別のホテルです。
どちらも魅力ある宿ですが、文化財の建築とクラシックホテルの物語を求めるなら、行き先は宮ノ下です。予約サイトで名前を確かめてから、日程の検索へ進んでください。
明治・大正・昭和から選ぶ、四つの宿泊棟の客室

このホテルの客室選びは、「どの時代に泊まるか」を選ぶことでもあります。宿泊棟は個性の違う四つ。明治24年築でホテルの顔であり続ける本館は全12室、明治期の洋風建築の典型と言われる気品の西洋館は全21室です。
昭和の華・花御殿は全40室。そして敷地の高台に建つフォレスト・ウイングは全47室で、悠々とした自然や箱根登山鉄道を望む部屋もあり、クラシックの趣と眺望を両立したい方に向いています。
和と洋が融合した設え、ヨーロピアン調の気品、花の意匠、森の眺め。四棟それぞれの世界観は公式サイトで見比べられます。迷う時間ごと、このホテルの楽しみです。
花の名前の鍵を受け取る、登録有形文化財の花御殿

四つの棟のなかでも、とりわけ心を掴むのが花御殿です。その名のとおり客室には一室ずつ花の名が付けられ、インテリアからルームキーまで、その花のモチーフがあしらわれています。部屋の鍵を受け取る瞬間から、物語が始まる棟です。
多彩な間取りもこの棟ならでは。同じ部屋がふたつとないという贅沢は、文化財のホテルだからこそのものです。2026年に誕生90周年を迎えた節目の棟でもあり、記念日の滞在にふさわしい特別感があります。どの花の部屋に泊まるかは、公式サイトで空きと合わせて確かめてみてください。

箱根外輪山を眺めて浸かる、宮ノ下温泉の湯とスパ

クラシックホテルでありながら、ここは温泉の宿でもあります。スパでは、箱根外輪山の雄大な景色を望みながら、名湯・宮ノ下温泉の湯をゆったりと堪能できます。
館内を探検して歩き疲れた足を、山を眺めながら湯にほどく。歴史散策と湯治がひとつの滞在で完結するのは、箱根のクラシックホテルならではの取り合わせです。
さらに深い休息には、リラクゼーション「禅」を。寺院をイメージした和の空間で、手当てに身をゆだねる時間が待っています。営業時間とメニューは公式サイトでご確認ください。
文化財の食堂で味わう、フレンチと御用邸の会席

夜の食卓は、それ自体が文化財級です。メインダイニングルーム・ザ・フジヤは、一世紀近くにわたり愛されてきた国登録有形文化財のフレンチレストラン。絢爛な装飾の天井の下でいただく洗練の一皿は、このホテルの滞在のハイライトになります。
和の夜なら、旧御用邸 菊華荘へ。宮ノ下御用邸だった由緒ある純日本建築で、季節の素材にこだわった日本料理を。シグネチャーのすき焼きを含む会席は、世代を超えて喜ばれる食卓です。
三つ目の選択肢が、大正9年築の旧宴会場を復原したレストラン・カスケード。歴代料理長が生んだ往年の洋食を、大正の空気の中で味わえます。各レストランの服装の目安や営業は、予約の際に公式サイトでご確認ください。
カレーもパンも物語になる、名物料理とベーカリー

富士屋ホテルの食には、代々受け継がれてきた「名物」があります。公式が「受け継がれる味、宿る物語」と掲げるシグネチャーメニューの数々——なかでもカレーは、オンラインショップで商品化されるほどの看板です。
もうひとつの立ち寄り先が、ベーカリー&スイーツのピコット。ホテルクオリティのパンが並び、パンとサラダとコーヒーを揃えたブランチセットのイートインも楽しめます。泊まらない日の宮ノ下散策でも、この味には出会えます。
名物料理の物語とランチの楽しみ方は語り出すと長くなるので、稿を改めてじっくりご紹介するつもりです。
三つの会場から選ぶ、クラシックホテルのアフタヌーンティー

午後の楽しみが、アフタヌーンティーです。このホテルでは、歴史と伝統が息づく三つの会場で、それぞれ趣の異なるアフタヌーンティーが用意されています。旬の素材を取り入れた彩り豊かなメニューに、季節ごとの特別なテーマが重なることも。
文化財の空間でいただく一段一段は、箱根の午後のいちばん優雅な過ごし方です。ラウンジのアフタヌーンティーはオンライン予約にも対応しているので、滞在に組み込むなら席の確保はお早めに。会場ごとの違いも奥深い世界なので、こちらも稿を改めて特集する予定です。
物語の中で目を覚ます、クラシックホテルの朝食

クラシックホテルの朝は、光の入り方まで設計されているかのようです。歴史ある空間で迎える朝の食卓は、この滞在の余韻をもっとも静かに味わえる時間になります。
朝を大切にする方はぜひ朝食付きプランを。朝食の会場や提供内容は、予約のプランによって変わることがあるため、公式サイトでご確認ください。
チャップリンも泊まった館内を、探検するという過ごし方

このホテルの過ごし方の主役は、館内散策です。国内外の賓客を迎え続けてきた歴史のなかには、喜劇王チャップリンの滞在も。実際に滞在した記録をもとにした本館のコンセプトルームが生まれるほど、その記憶はこの館に息づいています。
彫刻や意匠を探しながら廊下を歩き、ロビーで一息つき、庭を巡る。観光に出なくても、ホテルそのものが箱根随一の見どころです。外へ出るなら、宮ノ下の坂道散策や箱根の名所巡りへ。デイユースの用意もあるので、泊まる前の下見にも使えます。
旅の日程が決まったら|花の名前の鍵は、紅葉から埋まる

148年の物語に自分の一泊を書き足す。この宿を選ぶ理由が歴史にあるなら、予約の起点は棟です。明治24年築の本館はわずか12室、花の名前の鍵を受け取る花御殿は一室ごとに世界にひとつ。文化財の客室は代わりが効かないぶん、紅葉の宮ノ下は驚くほど早く埋まります。
宿と一緒に押さえておきたいのが、文化財の食卓です。ザ・フジヤのフレンチと菊華荘の会席、三つの会場のアフタヌーンティーは、週末は早くから席が動きます。宿泊と同じタイミングで確保しておけば、当日は館内を探検して、時間になったら食堂へ向かうだけの一泊になります。
予約は、楽天トラベル・一休・Yahoo!トラベルを横に並べて総額で見比べるのが確実です。同じ客室でも、掲載されるプランと総額が違ってくるためです。
- 楽天トラベルは楽天ポイントを貯めて使える
- 一休は上質な宿に絞った掲載とタイムセール(編集部おすすめ)
- Yahoo!トラベルはPayPayとの連携が持ち味
日本のリゾートホテルの原点は、写真で見るものではなく、泊まるものです。明治の廊下を歩き、花御殿の鍵を受け取り、御用邸の会席で夜を締める箱根を思い描いたなら、ロマンスカーの予約と一緒に、この文化財の一室を一休で先に押さえてしまいましょう。

結び|歴史は、泊まった人のものになる

明治の洋館、花の名前の鍵、御用邸の会席、そして名物のカレー。富士屋ホテルの滞在が特別なのは、豪華だからではなく、148年分の物語が「泊まる」という行為を通じて自分のものになるからです。
日本のリゾートホテルの原点は、写真で見るものではなく、泊まるもの。次の箱根で、その物語の登場人物になってみませんか。答えは、もう見えているのではないでしょうか。
TIMELESS編集部厳選|箱根のおすすめホテル
もっと深く知る
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- 箱根翡翠|早川のほとり3,000坪。二種の名湯と全室50平米が叶える、大人の仙石原ステイ
- ホテルインディゴ箱根強羅|炎と水のアートを浴びる、早川沿いの「泊まれるアート」
- ハイアット リージェンシー 箱根 リゾート&スパ|暖炉と大涌谷の湯がある、強羅の「我が家」に帰る滞在

アクセス|富士屋ホテル
富士屋ホテルは、神奈川県足柄下郡箱根町宮ノ下359に位置します。箱根登山電車の宮ノ下駅から徒歩およそ7分。新宿から小田急ロマンスカーで箱根湯本へ、そこから登山電車に揺られて向かう道のりも、クラシックホテルへの旅の序章として趣があります。
お車の場合は、小田原厚木道路の小田原箱根口ICからおよそ20分、東名の御殿場ICからおよそ35分です。
基本情報|富士屋ホテル
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 名称 | 富士屋ホテル(Fujiya Hotel) |
| 所在地 | 〒250-0404 神奈川県足柄下郡箱根町宮ノ下359 |
| 電話 | 0460-82-2211(受付時間 9:00〜20:00) |
| 創業 | 1878年(明治11年)・日本初の本格的リゾートホテル。1997年に建物の多くが登録有形文化財登録、2020年に大改修を経てグランドオープン |
| チェックイン/アウト | 15:00/11:00 |
| 客室 | 4棟・計120室(本館12室=明治24年築/西洋館21室/花御殿40室=2026年に誕生90周年/フォレスト・ウイング47室) |
| 温泉・スパ | 宮ノ下温泉のスパ(箱根外輪山ビュー)、リラクゼーション「禅」 |
| ダイニング | メインダイニングルーム・ザ・フジヤ(フランス料理・国登録有形文化財)、旧御用邸 菊華荘(日本料理)、レストラン・カスケード(洋食・大正9年築の旧宴会場を復原)、ラウンジ(アフタヌーンティー・3会場で提供)、ベーカリー&スイーツ ピコット |
| デイユース | あり(公式サイトから予約可) |
| 予約 | 公式サイトが「ベストレート宣言」を掲げる |
| 運営 | 富士屋ホテルズ&リゾーツ(湯本富士屋ホテル・箱根ホテル等は同グループの別施設) |
※館内施設・客室・ダイニング等の情報は、ホテル公式サイトに基づきます(2026年8月時点)。期間限定プランやアフタヌーンティーのテーマは時期により替わり、料金・営業時間も変更となる場合があるため、最新情報は公式サイトをご確認ください。


